【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
 カキン、カキン――。
 魔石発掘作業の音が、響いてきた。
 一人の鉱夫が気配を察したのか、顔を上げる。
「お。団長様」
 その声に反応した他の鉱夫たちも顔を上げ、頭をひょこりと下げる。
「そのまま続けなさい。気を遣う必要はない。崩落の現場を確認にきた。他にも怪しい場所があれば、遠慮なく言ってくれ」
「あいよ」
 採掘場で働く者は、どうしても力仕事になるため、男性が多い。そして見た目も屈強な男たちだ。顔が整っている男が多い魔法騎士団とは異なる。どちらかといえば、ローランは鉱夫よりの顔立ちをしている。それは彼の父親の血筋に、マヤン小国時代の出身の者がいたからだと聞いている。
 そのためか、ローランは彼らのことは嫌いではなかった。
 魔石の採掘は、魔法に頼ることはできない。魔石の魔力と魔法が干渉し、魔力暴走が起こる場合があるからだ。
 たまに、鉱夫の魔力と魔石の魔力の干渉が起こるときもある。だが鉱夫が所有している魔力量は生活魔法を使う程度のものであるため、たかがしれていた。大きな事故になる前に、派遣されている魔法騎士によって鎮められる。
 魔力干渉や暴走が起こるのは、一般的には魔力の相性によるものとされているが、詳しい内容は未だに研究中である。そういった研究は、魔導士の役目であった。彼らは前線に出ることはない。建物の中で、研究やら何やら行っている。
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