【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
「君にとって、僕という人間はその程度のものだったのか」
エミーリアには彼が口にした言葉の意味がわからない。
婚約解消も彼が望んだから受け入れただけにすぎない。
太陽の光に反射する彼の灰色の髪が眩しかった。思わず目を細める。
エミーリアだって、彼と作る未来を夢みなかったわけではない。なんとなく結婚して、なんとなく子供に恵まれ、なんとなく共に暮らしていくのだろうなと、そんなことを漠然と考えていた。
漠然と考えていたのも、それがあの家に生を受けた者の使命であるかのように思っていたのだ。
ちっ、と男は忌々し気に舌打ちをする。
「もういい。これ以上、不毛なやり取りはしたくない。すぐにでも婚約解消届はグロセ家に届ける」
「承知しました」
エミーリアは深々と頭を下げた。
「今までお世話になりました」
なにに対して世話になったのかわからないが、そう言わなければならないような気がしていた。
エミーリアが頭をあげると、そこに彼の姿はすでになく、濃紺の制服の裾をなびかせながら、すでに建物の向こう側に消えようとしているところだった。
風に吹かれた草木が、さわわと揺れる。
エミーリアには彼が口にした言葉の意味がわからない。
婚約解消も彼が望んだから受け入れただけにすぎない。
太陽の光に反射する彼の灰色の髪が眩しかった。思わず目を細める。
エミーリアだって、彼と作る未来を夢みなかったわけではない。なんとなく結婚して、なんとなく子供に恵まれ、なんとなく共に暮らしていくのだろうなと、そんなことを漠然と考えていた。
漠然と考えていたのも、それがあの家に生を受けた者の使命であるかのように思っていたのだ。
ちっ、と男は忌々し気に舌打ちをする。
「もういい。これ以上、不毛なやり取りはしたくない。すぐにでも婚約解消届はグロセ家に届ける」
「承知しました」
エミーリアは深々と頭を下げた。
「今までお世話になりました」
なにに対して世話になったのかわからないが、そう言わなければならないような気がしていた。
エミーリアが頭をあげると、そこに彼の姿はすでになく、濃紺の制服の裾をなびかせながら、すでに建物の向こう側に消えようとしているところだった。
風に吹かれた草木が、さわわと揺れる。