【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
「それは、ダメ……」
 その彼女の言葉が、異様に鮮明に聞こえた。
 はっと目を開ける。
 自分の身体の下にいたのは、見間違うはずもなくエミーリアである。彼女の服ははだけ、いつもは隠されている胸元の白い肌が、視界に入った。
(ま、まさか……)
 夢だと思っていたのに、夢ではなかったのか。
「す、すまないっ」
 だが、ローランはしっかりと紫紺の騎士服を着ていた。乱れていたのは彼女だけ。
 それだけが幸いだった。
 慌てて、彼女の素肌を隠すようにシャツと上着をかぶせた。
「俺は、隣の部屋にいる。身支度を整えなさい」
 そう言って、彼女の側から逃げた。隣の部屋へ駆け込み、鍵をかける。
(まずいだろう……。あれは、まずい……)
 夢だと思っていたのに、夢ではなかった。
 寝台へと潜り込み、頭から毛布をかぶる。
(彼女に謝罪をしなければ……。だが、どんな顔をして会ったらいいかがわからない……)
 彼女に酷いことをしてしまった。
 なぜ、あのような状態になってしまったのかわからない。
 だが、やっていいことでもない。
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