【コミカライズ決定】愛をささやかないで~婚約解消された可愛げのない事務官は、強面騎士団長に抱かれます
 それでも、枯渇した魔力は充分に戻ってきている。それも彼女のおかげだろう。初めて行った魔力交感は、悦楽に満ちていた。
 魔力交感は、その特殊な方法から特別な関係にある間柄でしか行わない。だが、生命の危機に脅かされるほどの状態であれば、特例として行う場合がある。このときに限って、報告が義務付けられている。それは、後々の問題を回避するためでもあった。
 今回の場合は、特例扱いだろう。となれば、報告をしなければならない。
 団長である自分が魔力枯渇を起こし、補佐事務官と魔力交感を行った。
 では、魔力枯渇を起こすほど、何をしていたのかが問われる。
 マヤンからの転移魔法だけであれば、枯渇状態にはならない。今回は、転移魔法を使う前に、他の魔法を使ったのが原因だ。
 では、なぜその魔法を使う必要があったのか。
(そうか……。なぜ、あのタイミングで馬が暴れ出したのか。それを突き止めなければならないのではないか?)
 どうしても明日、外せない会議があったため、今日中にここへ戻ってくる必要があった。だから、馬が暴れたという事実だけを心にとどめ、原因を探ろうとはしなかったのだが。
(餌に興奮剤が混ぜられていた、と言っていたな……。なぜ、そのような状態になるんだ?)
 ローランは次第に冷静さを取り戻しつつあった。
 やはり、マヤンとロマシチの関係はもう少し把握しておく必要がありそうだ。
 そのために、彼女へ調査を依頼したのだ。
 ローランはすっと身体を起こした。だが、くらりと目の前が暗くなる。
 まだ、本調子ではなさそうだ。今日は大人しくここで寝ていたほうがいいだろう。
 それに、さっきの今で、彼女にどのような顔をして会っていいかもわからなかった。思い出しただけでも、顔が熱い。
 もう一度寝台に横になると、静かに目を閉じた。
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