甘噛み吸血鬼は、トドメをささない (短)
「私に⋯⋯何かした?」
「むしろ、何かされていたのは俺の方だよ。だから――
今度は俺が“何か”をする番だ」
「?」
唯月くんが何を言っているのか分からなくて、呆然とする私。
すると唯月くんは、笑いながら立ちあがり、一歩ずつ私に近寄った。
「復活の手伝いをしてくれた雨水さんへの、せめてへもの餞別だよ。
さぁ、心ゆくまで受け取って――」
「え、ひゃ……、あッ!」
一瞬のことだった。
唯月くんは私に近づくと、すぐに腕を掴み、強引に引き寄せる。
そして私の肩に力を入れ、ズルリと制服をずらした。露わになった私の首筋を見て、唯月くんは、ペロリと舌なめずりをする。
「千年ぶりの――ごちそうだ」
ニッと笑った唯月くんの口から、私と同じ吸血鬼の牙が覗く。その牙について質問したかった、だけど――
「唯月くん、その牙は!」
「もう黙って」
「ん!?ぁ⋯⋯――」
赤い瞳と目が合った瞬間。
唯月くんは躊躇なく、
己の牙を、私の首に突き立てた。