甘噛み吸血鬼は、トドメをささない (短)
「これで分かったかな?もう君は吸血鬼じゃない。人間なんだ」

「吸血鬼じゃない⋯⋯。ウソだ」

「嘘だと思うなら、この血を飲んでみて」

「⋯⋯っう、」


お皿の上に乗っているのが人の血かと思うと、食欲なんて秒で遠のいた。さっきまで騒がしく鳴っていたお腹さえも、一気に静かになる。


「気持ち悪い――と思ったなら大正解。それが普通。それが人間の感覚なんだよ」

「し、信じられない⋯⋯。吸血鬼が人間になるなんて。そんな事が可能なの?」


頭がついていかない。けど――「可能だよ」と言った時の、迷いのない唯月くんの目。その眼光の鋭さが、どんどん現実味を増していく。


「俺くらいの吸血鬼になると、他の吸血鬼の力をとる事が可能なんだよ」

「“俺くらいの吸血鬼”?」

「うん。だって俺、吸血鬼の中でも一番強い――吸血鬼神だからね」

「きゅ、」


きゅうけつきじん⋯⋯って、何?


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