甘噛み吸血鬼は、トドメをささない (短)
ポカンとした私。唯月くんは呆れたように溜息をつきながら、スプーンでカレーをすくい、無言で私に伸ばした。

カレーのいい匂いに、再び食欲が湧く。我慢できずに、パクリとスプーンを口に含んだ。

そして、そのやりとりを続けたまま――つまり、唯月くんは私にカレーを食べさせながら、一から順に説明した。


「昔はねぇ、人間界にも吸血鬼はワラワラいたんだよ。皆バレないように吸血して、人に紛れて生活してた。

だけど、ある日ね。起こっちゃったんだ。神父による吸血鬼の大量虐殺がね」

「!?」

「吸血鬼神って、吸血鬼の王様みたいなもんでさ。だから、神父の狙いは俺だった。俺を仕留めるまでは決して諦めない、しぶといヤツだったよ」


不眠不休が一ヶ月続く激しい攻防だったんだ――と。唯月くんは、遠い目をして言った。

その瞳の奥に、当時の光景が写ってるかのように。唯月くんの目が、炎がメラメラ燃える赤色に変わる。

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