甘噛み吸血鬼は、トドメをささない (短)
頭を起こす力は残っていない。だから目だけを、素早く動かす。
すると――
同じクラスの唯月 透夜(ゆづき とうや)くんが笑みを浮かべて、自身の手を私に差し出していた。
「唯月くん……、この手は?」
「うん。ここなら噛みつきやすいかなって思って」
「え……」
犬じゃないんだから……とツッコミたいのを我慢する。
そもそも、唯月くんは私が吸血鬼って知らない。だからこそ、どうして私に腕を出してくるのか――謎は深まるばかり。
その時。
唯月くんが「あぁ」と言って、自分の制服のボタンを、上から順に外し始めた。
途端に首から下が顕になった唯月くんを前に、私は思わず「きゃ!」と声が出る。見えた肌色を、急いで両手で隠した。
「そんな可愛い反応しないでよ」