甘噛み吸血鬼は、トドメをささない (短)
吸血鬼の嫌な勘
私が人間になって、数日が経った。
体調は、驚く程に良い。いつも青ざめていた顔は血色がよくなり、体の内側から元気が出てきた。
お母さんからも「最近よくご飯を食べるようになったわね」って褒めて貰えたし、勉強にも身が入るようになった。
つまり、順風満帆。
そう。驚くことに私は「人間になったこと」を、一秒たりとも後悔していなかった。
「オーライ!」
前までは休みがちだった体育の授業も、この通り。無事に出席できている私。
今日は、バレーの日だ。
少し手を重ねて、ボールの重力を僅かに受け止めた後。絶妙な力加減で、再び空中に返す。
これが、楽しい!
「やったー!また点が入ったよ〜」
「やるじゃん雫!」
「そんなに力あったっけー?」
「何はともあれ、良くやった!」
同じチームの子と手をパシンと叩き、喜び合う。皆と協力し合う事が少なかった私にとって、嬉しくて仕方ない瞬間だった。
まぁ、それも仕方ない。
だって、今までの私は――