甘噛み吸血鬼は、トドメをささない (短)
「え、どうしたの?二人とも」


なかなか動かないから、心配になって声をかける。

すると、目を見開いた唯月くんの顔が、やんわりと元に戻っていく。「何でもないよ」と、私に笑みを向けた。

一方の神代くんは、というと――


「⋯⋯っ」


今だ、唯月くんの事をジッと見ていた。よく見ると、その顔にはビッシリと汗が滲んでいる。

もしかして冷や汗?
神代くん、どうしたの?


「か、神代くん?」


尋ねると、神代くんはハッと我に返る。そして何事も無かったように「バイバイ」と手を振って、保健室を後にした。

え、行っちゃった。明らかに「何かある」みたいな顔だったけど⋯⋯大丈夫かな?


「どうしたんだろう。神代くん」

「⋯⋯さぁね」


だけど「さぁね」と言った唯月くんも、何やら思い詰めた顔をしていた。まるで、取り繕っている笑顔だ。
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