甘噛み吸血鬼は、トドメをささない (短)
「悪い子。もうこんなに欲しそうな顔をして。俺は“消毒”っていったはずだよ?」

「欲しそうな顔、なんて⋯⋯っ」

「――ふっ」


唯月くんは目を細めて、ゆるりと笑う。そして、


「本当、悪い子だ。

今日は沢山もらうからね――雫」


初めて私の名前を呼びながら……。私の太ももに、尖った牙を突き刺した。


「んーっ!?」


まさか「消毒する」と言っていた場所から吸血されるとは思わなくて、椅子をガタンと揺らして驚く私。

だけど唯月くんは、今にも椅子から落ちそうな私を腕に抱きとめ――私の足を高く上げ、器用に内側に吸い付き続ける。

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