甘噛み吸血鬼は、トドメをささない (短)
〇〇のライバル
私が保健室のベッドで眠っている間。
室内では、こんなやり取りが行われていた。
ガラッ
「⋯⋯来ると思ったよ」
誰かが、保健室に入ってきた。
その姿を見ないまま、唯月くんは「誰がいるか分かったように」――目を伏せて笑う。
「君とすれ違った時、昔を思い出したよ。そして――
腸(はら)が煮えくり返った」
「……」
急に声を低くして話す唯月くん 。一方で、彼の言葉を聞いて、何も言わない「その人」。
唯月くんは、会話を続けた。
「だけど、それは君も同じでしょ?俺とすれ違った瞬間――俺が何者か、すぐに気づいた。
さすがは、俺を封印した神父の血を引くだけある。さすがは、あの忌々しい奴の子孫。
千年の時を経て、まさか再会するとは思わなかったよ。それとも⋯⋯あの神父が、神にでも頼んだ?
“どれだけ時間がかかろうと、必ず俺を滅ぼす。だから、どんな形であれ――
再び、俺と出会いますように”。って」
いつもより口数の多い唯月くん。そんな彼に向かい合うは、
「残念だ、唯月。いや――
最強の吸血鬼」
銀色の銃を持った、神代くんだった。