甘噛み吸血鬼は、トドメをささない (短)
――雫
「え、今……。唯月くん?」
この場にいない唯月くんが、私の名前を呼んだ気がした。
「どこ?唯月くん?」
キョロキョロ見回しても、唯月くんが隠れている様子はない。まさか……と邪推して布団の中を探したけど、ココにもいなかった。
その時。
青と赤の光りが、夕暮れの空を再び彩る。さっきよりも一段と激しい。地を裂くような雷鳴が、辺り一面に轟(とどろ)いた。
「え、まさか!」
その時、ピンときたのは――あの光を放っているのは、唯月くんじゃないかって事。
「な……、なにしてるの、もう!」
一度「唯月くんじゃないの?」って思ったら、もう、そうとしか考えられない。
私は急いで着替え終わり、保健室を出る。そして一目散に、校舎裏を目指したのだった。
そして。
目的地にたどり着いた時。
私が見た光景――それは、全く予想していないものだった。