甘噛み吸血鬼は、トドメをささない (短)
「さぁ。もうトドメをさすけど良い?

何か言い残したい事があれば、同級生のよしみとして特別に聞いてあげるよ」

「はぁ、はぁ……っ」


吸血鬼化した唯月くんが、誰かの上に馬乗りになっている。

そんな彼の手には、さっき保健室の中から見た赤い閃光――それがボールのように球状になっていた。バチバチと、赤黒い火花を散らしている。

その光のボールを投げんとする勢いの唯月くん。その先にいるのは――


「神代くん……?」


今日、私にたくさん優しくしてくれた……あの神代くんだった。


「二人共、何してるの!?」

「あれ?雫。起きたの?」

「”起きたの”?じゃなくて……。これ、どういうこと!?」


まるで何事もないように、いつもの調子で返事をする唯月くん。

ひと一人を簡単に殺せそうなボールを手にして微笑む様は――

まさに、吸血鬼。
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