甘噛み吸血鬼は、トドメをささない (短)
「神代くんから退いて!痛がってるよ!」


唯月くんを説得しようと、少しずつ二人に近づく。だけど、全身傷だらけの神代くんが、私に怒鳴った。


「バカか!こっちに来るな!俺の事はいいから、早く逃げろ!」

「ば⋯⋯!?」


今バカって言った!?あとで覚えておいてよ、神代くん!――と言いたいのを我慢して。勢いに任せて、走って二人に近づく。

ガシッ


「ちょっと、離してよ雫」

「やだ!」


唯月くんの片腕を掴んで、思い切り引っ張る。神代くんから退けるようにと、祈りを込めながら。

だけど……なかなか動かない。我慢できなくなった私は、唯月くんをキッと睨んだ。
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