甘噛み吸血鬼は、トドメをささない (短)
「唯月くん、コレ冗談にしては笑えないよ。神代くんが傷だらけじゃん!

それに、さっき“トドメ”とか聞こえたけど⋯⋯。物騒な事する気じゃないよね?」


すると唯月くんは、迷いなく答えた。


「するよ、物騒なこと」

「⋯⋯え?」

「コイツは俺の吸血鬼の力を封印した神父の子孫だ。仲間を大量に殺されたお礼もかねて――今、ここで息の根を止める」

「!?」


唯月くんの顔が、口調が、雰囲気が――彼の本気を物語っている。

全身にまとった殺気。それは、真っ直ぐ神代くんに向かっていた。


「だから離して、雫。これは同級生のケンカじゃないよ。お互いの命を掛けた雪辱戦(せつじょくせん)だ。

だから、安易に踏み入らない事。ここから先に待っているのは――

どちらかの死。それだけだよ」

「!!」


手が震える、足が固まる。いつもの唯月くんじゃなくて、まるで知らない人みたい⋯⋯。

だけど、

だけど――!!
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