甘噛み吸血鬼は、トドメをささない (短)

グイッ


唯月くんの両手により、私の頬は捕まれ、固定される。

まるで「俺以外見るな」と言わんばかりの気迫。

その時の唯月くんの整っている顔が。顔に張り付いている笑顔が――怖いくらい綺麗だった。


「雨水さん、もう限界でしょ?早く俺の血を飲んで。首はココだよ」

「ッ!」

「あれ?俺のいい匂いがしてきた?目の色が、赤色に変わってるよ?」

「や、見ないで!」


吸血鬼の特徴の一つである、赤い目を見られた。「サー」って音がするくらい、一瞬にして血の気が引いて行く。

それにもかかわらず、目の前に出された手を「美味しそう」なんて思ってしまって……。


こんな時でさえ吸血鬼の本能が揺るがない自分に、情けなくて涙が流れた。


「どうして泣いてるの?」
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