甘噛み吸血鬼は、トドメをささない (短)
「私、唯月くんに⋯⋯まだ言ってない事があるの」

「なに?恨み言?」

「違う!そうじゃなくて⋯⋯。お礼が、言いたかったの」

「お礼?」


眉間に皺を寄せる唯月くん。尖った長い爪が、いつの間にか神代くんの喉に、狙いを定めていた。


「私、人間になって良いことしかなくて⋯⋯。吸血鬼でいた頃よりも、ずっとずっと毎日が楽しいの!

だから、唯月くんにお礼が言いたかった」


唯月くん、私を人間にしてくれてありがとう――って。いつもいつも、心のどこかで、そう思っていた。


「でも、いま唯月くんが神代くんを傷つけたら⋯⋯。私は、自分の血を、唯月くんにあげた事を後悔する。自分が人間になった事を恨み続けるよ」

「⋯⋯俺には関係ないよ」

「関係なくない!!」


ギュッ

唯月くんの腕を離す代わりに――唯月くんの体に、思い切り抱きつく。

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