甘噛み吸血鬼は、トドメをささない (短)
「雫⋯⋯?」

「関係なくないよ。お礼を言わせて。

人間にしてくれてありがとうって⋯⋯。どうしても、唯月くんに言いたいのっ」

「!」


その時。

唯月くんの体から、少しだけ力が抜けた。神代くんの喉を狙った爪も、短く引っ込んでいる。

そんな中、次に聞こえてくるのは――唯月くんの優しい声色だった。


「雫⋯⋯」

「なに?」

「いつも俺が強引に血を吸うの⋯⋯嫌じゃないの?人間にならなければ、吸われる事もなかったのに」

「それは⋯⋯」


確かに、毎日ヒヤヒヤしてる。

でも不思議と、嫌じゃない。


「吸血されるのは……私なりの恩返し、って事で」

「ふふ。何それ」


顔をほころばせて、唯月くんはいつものように笑ってくれた。吸血鬼化も解け、人間の姿に戻っている。

もう大丈夫かな?私は唯月くんの体から離れて、彼の手を引っ張った。
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