甘噛み吸血鬼は、トドメをささない (短)
唯月くんが動けば、下にいる神代くんは自由に動ける。だから、その内に逃げて欲しかった。

でも――

カチャ


「まさか雨水までグルになって、その吸血鬼を生かしてたとはな」

「神代くん⋯⋯?」


唯月くんが馬乗りをやめた途端、神代くんは軽い身のこなしで立ち上がる。そして、持っている銃の切っ先を、唯月くんに定めた。


「オマケに、雨水は“吸血鬼だった”?見逃せないな。人間になれたって事は、いつまた“吸血鬼”になるか分からないって事だ」

「っ!」


それは、有り得ない。だって、私は吸血鬼よりも、人間でいる方が好きだから。

でも、もし唯月くんが「吸血鬼の血」を私の体に入れたら?その時、私はまた吸血鬼になるのかな。

唯月くんが吸血鬼の力を取り戻し、千年の時を経て復活したように――


「って事は、だ」


私が考えにふけていると、神代くんが呟いた。

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