甘噛み吸血鬼は、トドメをささない (短)
甘いトドメ
「雫!!」
声がしたと同時に、
私の体は、温もりに包まれた。
「⋯⋯え」
ギュッて音がするほど、唯月くんに力強く抱きしめられる。
「ゆ、唯月くん⋯⋯?」
「うん」
「何してるの⋯⋯?」
「柄にもないこと、かな」
フフと笑った唯月くんは、私の肩に顎を置いたまま話す。
あれ?
唯月くん、銃に撃たれたんじゃないの?大怪我してるんじゃないの?
だけど、私の心配よりも先に。唯月くんが「大丈夫?」と、僅かに体を離して、私の顔を覗き込む。
「雫、怪我は?」
「ない⋯⋯。どこも痛くない」
「そう。なら良かった」
口角を上げたまま、唯月くんは「じゃあ早く言って」と私に催促する。分からなくて首を傾げると、わざとらしくため息をつかれた。