甘噛み吸血鬼は、トドメをささない (短)
「お願い、私の前から⋯⋯。今すぐ、どこかへ行ってッ!」


目が赤く光り、歯が尖り――時間が経過するごとに、吸血鬼としての自分が顔を出す。

早く唯月くんを私の前から逃がさないと、彼が危険だ。


「私が自分を保って居られるうちに……、早く行って!唯月くんっ」


すると唯月くんが「はぁ」と、残念そうにため息を吐いた。

かと思えば、素早く私の頭と背中に手を回し、抱き上げる。そして、あぐらをかく自分の足の上に、なんなく私を置いた。


「まったく、手がかかる子だね君は」

「ゆ、唯月くん……?」

「こんな強引な事はしたくなかったけど」


すると、唯月くんが自らの首を、私の口元に近づけた。

そして――


「俺は飲んでほしいんだよ。

さぁ。力を入れて?」

「んっ!?」

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