甘噛み吸血鬼は、トドメをささない (短)

私の後頭部を抑えて、そのまま自分の首元に噛みつかせる。唯月くんは、私を無理やり吸血行為に至らせたのだ。


一体、何が起こってるのか分からない。頭の中がグチャグチャで、今にも血を戻してしまいそう。


だけど、混乱の中。

私は見てしまった。


私の牙が己の皮膚に刺さる瞬間――唯月くんは、うっとり光悦した表情を浮かべていた。

その光景を、私はしっかりと見た。残念な事に、唯月くんの表情の意味は、全く分からないけど。


ジュ、ジュル――……


何度か吸った後に、やっと自制心が働いて「プハッ」と口を離す。すると唯月くんの首から、赤い血が球状に浮き出て来た。


「はぁ、はぁ……っ」


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