甘噛み吸血鬼は、トドメをささない (短)
ガシッ
気を失っているはずの唯月くんが、座ったままの状態で、私の腕をいきなり掴んだ。
「きゃ!?」
「ふぁ〜しまった。少し寝ちゃった。あ、雨水さん。調子はどう?少しは楽になった?」
「ど、どうして……っ」
驚きで心臓がバクバク鳴る私とは反対に、唯月くんは私を見て「うんうん」と嬉しそうに頷く。
「顔色が良くなっている。さすが俺の血!君が飲んでくれて、本当に良かった」
「!?」
涼しい顔をして、こんな事を言う唯月くん。
吸血により一瞬にして良くなった私の顔色は、ここに来て再び。一瞬にして悪くなった。
「唯月くん、君……何者なの?どうして記憶が消えてないの?そもそも、なんで私が吸血鬼だって分かったの?」
「さぁ――どうしてだと思う?」
ニヤリと笑った顔が、両目に焼き付く。そして、なぜか唯月くんから目が離せない。