【短編】極上ヴァンパイアたちは薔薇乙女を溺愛中
「おい――」
「こら、沢」

 近くにいた律さんが声を上げようとしたけれど、それを遮るように満くんが沢くんを止める。

「ダメだろ? 緋奈ちゃん怖がってるじゃないか」
「いや、怖がってまではいないんだけど……」

 でもまあ緊張はしてるのでいきなりフレンドリーすぎても戸惑うというか……。

 軽く頭痛がしてきて、どう対応しようかと悩んでいるとずっと不満そうだった潤くんが口を開いた。

「本当にこんな女が薔薇乙女なのかよ?」
「え?」

 私を――というより、律さんを睨みつけながら沢くんを押しのけるように近づいて来る。

「確かにいい匂いはするけど、そこまで特別って感じしねぇけど」

 この間見た光景も思い出して、私を本当に疑っているというより律さんに食って掛かりたいだけなのかもしれないと思う。
 でも、それに私を巻き込まないで欲しい。

 変に関わらないようにと思って黙っていると、潤くんは驚きの行動に出た。

「本物か確かめさせろよ」
「え?」

 律さんを睨んでいた視線を私に向けた潤くんは、自分の手をかじり血を見せる。

「っ⁉」

 直後、私は自分の内側から溢れる熱を感じた。
 自分じゃ見えないから分からないけれど、律さんの言う通りなら目の色が黒からバラ色に変わっているんだろう。
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