【短編】極上ヴァンパイアたちは薔薇乙女を溺愛中
 どうしていきなり律さんが出てくるのか。
 しかもファーストキスをあげちゃうなんて話になるのか。

 色んな意味で慌てふためく私に、咲さんはニコニコ笑いながら説明する。

「吸血されるのが嫌なら唇にするしか無いだろ? でもファーストキスを報酬にするのはかわいそうだし……だったらまずは好きなやつとすればいいんじゃないかなーと思ってね」
「なっなっなっ⁉」

 す、好きなやつって、律さん?

「咲さん、その言い方だと緋奈ちゃんの好きなやつは律さんだって言ってるように聞こえますけど?」

 言葉も紡げず動揺する私の横で満くんが少し棘のある口調で聞く。
 穏やかそうな満くんでもそんな声を出すのかと少し驚いて、逆にちょっと落ち着いた。

「んー、なんとなくそうだと思うんだよね。……ねぇ、ヒナちゃんは律にファーストキスあげるの嫌?」

 面白そうに言いつつもどこか真剣な目をした咲さんは、私に妖しい笑みを向けながら問いかける。

 私のファーストキスを律さんに?
 あの極上すぎる顔に近づいて、アメシストの目に見つめられて?

「っ!」

 想像するだけで顔が熱くなってきた。
 熱すぎてなのか、頭が痛くなってくるほどに。

「い、嫌っていうか……その前に好きかどうかも……」

 恥ずかしがりながら答える私に、咲さんは続けて質問してくる。
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