【短編】極上ヴァンパイアたちは薔薇乙女を溺愛中
***

 思えば、頭痛がするのはいつも満くんがいるときだった。
 きっと、押し込められた記憶が満くんに気をつけろって警鐘を鳴らしていたからなんだと思う。

「うっ……満、くん……?」
「思い出した? ごめん、頭痛いよね? 本当は思い出すことが無いようにって催眠をかけたから……」

 申し訳なさそうに言葉を紡ぐけれど、その表情はうっすら笑みを浮かべている。
 私は名残のようにズキズキと痛む頭を押さえながら、状況を整理した。

 満くんと初めて会ったあの日、彼は出会いをやり直そうと言って私に催眠をかけた。
 満くんに恐怖しか抱かなかった記憶を思い出さないように、奥底に押し込めて。

 そうして彼の言う通り、出会いをやり直すために満くんは悟志を利用して私をこの月虹学園へとおびき寄せた。

 でもどうして今記憶を呼び起こしたんだろう?
 私は満くんを優しい穏やかな人だと思っていたし、本当の出会いのときのように怖がってなんていなかったのに。

「どうして、思い出させたの……?」

 少しずつ頭痛が和らいで、しっかりと満くんを見ることが出来た。
 警戒心を最大限に引き出し、彼の答えを待つ。

「どうして? そりゃあ、君が律さんに惹かれてるからだよ」
「えっ……」
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