【短編】極上ヴァンパイアたちは薔薇乙女を溺愛中
「僕の元に来るようにと画策したのに、君は僕ではなくよりにもよって律さんに見つかってしまった」

 話しながら、うっすらと浮かべていた笑みすら消える。
 苦々しい、悔しそうな表情。

「あの人、薔薇乙女どころか女なんて興味ないって感じだったくせに。君には初めから優しく接して……」

 どんどん、声に怒りがにじみ出てくる。

「俺と同じく衝動を抑えられなくて君を吸血したってのに、君は俺に向けたような恐怖の目を律さんには向けていなかった」
「それは……」

 それはだって、満くんはその前にケンカ相手を叩きのめしていたし。
 それに吸血の後も欲に満ちた目を向けて来ていたし。

 逆に律さんは直前に絡んでいた潤くんを威圧するだけだったし。
 吸血の後、怖がる私に優しく接してくれたし。

 理由は明白だったけれど、それを言っては更に怒らせてしまう気がして口をつぐんでしまう。
 でも、言わなくても変わらなかったのかもしれない。

「緋奈ちゃん、記憶が戻ったのなら分かるだろう? 君は僕が先に見つけたんだ……僕の、薔薇乙女だ!」

 黒曜石の目の奥に、(くら)い欲の炎が燃え盛る。

「律さんに渡すくらいなら、無理やりにでも契約する!」
「っ⁉」

 逃げなきゃ! と思うには遅かった。
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