【短編】極上ヴァンパイアたちは薔薇乙女を溺愛中
「緋奈!」

 願った人の声が聞こえて、ハッと目を開ける。
 鍵をかけられた小屋のドアがガァン! と大きな音を立てて蹴破られ、律さんが現れた。

「律さん⁉ なんで――⁉」

 驚愕の声を上げる満くんだったけれど、その答えを返さずに律さんが動く。
 気づいたときには、私は満くんから離され律さんの腕の中にいた。

 あ……律さんの匂いだ。

 四六時中一緒にいたわけじゃないのに、いつの間にか覚えてしまっていたみたい。

 力強い腕は、こんなときでも私を優しく扱ってくれている。
 壊さないように、繊細なガラス細工のように。

 ほら、自分の望みのために無理強いしてくる満くんとは全然違う。


 顔を上げて見えるのは怖いほどに整った綺麗な顔。
 その顔は今満くんを射殺しそうな目で睨んでいた。

 怖くて、キレイで――とても優しいヴァンパイア。

 律さんの香りに包まれて安心してしまった私は、疲れもあってそのまま意識を手放してしまった。
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