【短編】極上ヴァンパイアたちは薔薇乙女を溺愛中
 律さんは屈んで座っている私に目線を合わせると、耳裏に手を差し込むようにして片手で頬を包んだ。

「顔色は……大丈夫そうだな」
「大丈夫ですよ。最近頭痛で顔色悪かったのも満くんが原因だったみたいだし」

 三人のように私を取り合うようなことは言わず、ただ心配してくれる律さんに安心感を覚える。
 最上級の顔が近くて、硬い男の手に触れられてドキドキするけれど、律さんなら大丈夫と何故か思えた。

 ……でも、次の発言でそれは気のせいだったのかもしれないと思う。

「そうか」

 ホッと安堵の息を吐いた律さんは、口角を二ッと上げて笑みを浮かべた。

「じゃあ、これからは本格的に求愛しても大丈夫そうだな?」
「へ? これからはって……」

 今までも結構ドキドキさせられてたんだけど……本格的って?

 アメシストの目を妖しく光らせる律さんに、少し不穏なものを感じてゴクリと唾を飲み込んだ。

「あっ! 律先輩抜け駆けはズルイですよ⁉」

 たしなめられて大人しくなっていた沢くんが、律さんの様子が変わった瞬間また騒ぎ出す。

「確かに今の状況はズルイよね? ヒナちゃんに契約相手として選んでもらいたいのはみんな同じなのに」

 咲さんも非難し始めて、潤くんが身を乗り出す。
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