ヴァンパイアガールズ
どこまでもにこやかなアリサさんとちはやの父親は,対照的に見える。
もしかしたら,つい最近になって,初めてちはやが学園でどう過ごしているのか知ったのかもしれない。
ヴァンパイアとして生活しているはずのちはやが,よりにもよって底辺クラスで過ごしていると。
「本田浅海,俺の選んだ人間だ」
粗雑な紹介。
私は自分の立ち位置に戸惑いながら,丁寧に礼をする。
「ふぅん? 顔はいいわね,体は少し寂しいかしら。1口くれる?」
顔の次に体の言及をするあたりが,親子だと思った。
一口? と首をかしげると,ちはやが断りもなく私の手首に針を刺す。
王子のキスのようにして,アリサさんが後ろ髪を耳にかけながら私の滲み出た血を舐めた。
「ん……まぁ! 美味しい。文句無いわね,完璧よ。好きになさい」
「俺が選ぶ相手に文句なんかあるわけないだろ」
和気あいあいと話を進められて,訳が分からなかった。
「痛くない? 浅海。アリサさんに最小限しか渡したくないなら,悪くないけど……いきなりなんて最低」
美海の実況が,一々ありがたい。