ヴァンパイアガールズ
シュウが,血をくれるやつがいると言って美海を連れていく。



「ねぇ,浅海。今日もしかして,誰かと過ごす約束でもあるの?」

「え?」



まさか,と私はハルを見た。

どうやら本気で言っているようで,呆れる。



「ヴァンパイアの交渉って,苦手なの。知ってるでしょ? 吸血するのもされるのも,付随されるのも全部いや。なのにわざわざこんな日に,そんなものあるわけない」



一々明言すると,ハルは落ち着いたようだった。



「急にどうしたの?」

「ううん,シュウが,変なこと言ってて。そんなもんだって肯定されたし,様子が変だったって」



そんな会話もあったと,昨日の事を思い出す。

あれがそんな誤解を生んだのか。

だけど,イベントも皆とは過ごせない。

だから,それはそのままの方がいいんだろう。



「僕もなんだ。空いてるなら今日の放課後,一緒にいようよ」

「ごめん」



私はさっと立ち上がった。

ハルの言葉は,いくらなんでも行き過ぎている。

身持ちがよいとは言え,ハルはヴァンパイア。

まさかと思うけど,とにかく今日は特にだめ。



「恋人の時間,関係なく。逢う約束はあるの……死んじゃうくらい小さい女の子」



ハルはよく私の身の心配をする。

だから嘘の中にも,優しい設定を付け加えた。



「……そっか」



ハルは何故か,少し傷ついたような顔をした。
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