ヴァンパイアガールズ
害意あるものに撃たれるくらいなら,己が銀の弾丸となれ。

つまり,やられるくらいならやってやれ。

そんなド直球で過激な教育理念に基づいているらしい。

さすが,創立者である学園長がヴァンパイアなだけあると思う。



「おはよー!」

「ハル」



後ろから覗いた,小綺麗で可愛い顔。

驚いた,と私はハルを見返した。

ハルミヤ ハル。

"ヴァンパイア"である彼は,数少ない私の友達だった。

ハルがいると言うことは,ちょっと生意気くさい彼もいる。



「はよ」



カガミ シュウ。

プラチナに近い茶髪なハルと違い,シュウの髪は真っ黒で。

少し親しみやすささえ感じるのに,シュウは懐かない狂犬のような性格だから。

私はあまり深く突っ込まない方が身のためだと思っていた。



「おはよう,浅海」



このゆったりした眠た声は。

もう一人,大事な女の子の声。



美海(みうな)



細身の長身,モデル体型に凭れかかられて,私は抱き止める。

高山美海,私のたった一人の女の子の友達。

彼女に心を開いた理由は単純で,入学して早々,美海が私を救ってくれたから。

これはちっとも,大袈裟なんかじゃなくて。

ここにいる3人は,全員が共通したヴァンパイア。

そんな外見以外の視覚的差といえば,1番は名前。

放任者義のヴァンパイアらしく,子が自分で名前をつけるそのシステムのおかげで。

名前や名字に漢字を宛てるのは珍しい。

ハルやシュウのように,気に入った音だけを採用するケースが多いのだ。それを私と来たら,外見だって疑われないぎりぎりなのに。

本名の形を変えないまま登録してしまったために,数奇な美海がいなければ疑われていた。

一緒だねと静かに微笑まれたあの瞬間の生きた心地は,きっと一生忘れない。



「浅海,今日も……だめ?」

「だから,嫌だってば」



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