ヴァンパイアガールズ


「なんで」



そんな義理はないと言わんばかりのその表情。

顔以外の全てを他の誰かに吸収されたんだと思った。

悪魔みたいな,人間。

あくまでも,私は自分を人間だと口にすることは1度もない。

それもこれも,せめて万が一の時には少しでも言い逃れたい気持ちからだった。



「どうしても,やり遂げたいことがある。ここじゃないとだめなの,でも,あんたのうっかりが全部ぶちこわすかもしれないの」



ハルにもバレた。

なのに,悪あがきもいいところ。

どこまでもカッコ悪くて,ダサい。

目の前のあんたにも見つかって,肝心の私はなにも見つけられていないのに,と。

思わず,熱く本音が溢れる。

こんなのは,弱みになるだけなのに。



「……なんだよ,それ。で,何を黙ってりゃ満足なんだ? ここでお前に逢ったこと? それとも,お前が人間だってこと?」



相変わらず,初対面の相手に対して質問ばかり。

何が恋人の日,何が恋人の時間。

今日は最低最悪の,厄日だというのに。



「……だから,ぜんぶ。ぜんぶ,黙っていて」



私は腕を引かれ,すとんと目線を合わせられ。

嘘を見抜くような瞳に耐えかねて,言いながらゆっくりと目を閉じた。

すっと影の落ちる気配がする。

私は最後の睫毛までもを,ゆっくりと下ろした。
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