ヴァンパイアガールズ
ただ1度,触れるだけのキス。

初めてのキスは,こんな時でも。

柔らかくて,甘かった。



「……女の涙なんて糞食らえでしかねぇけど。こらえるくらいなら,いっそ泣け」



最低だ。

最低だけど,慰めているようで,扱いづらそうで,めんどくさそうな態度にムカッとくる。

それがなんでかなんて分かんないけど,取り敢えず,ムカついた。

もう嫌だよ,こんな学園。

ほんとにね,最悪なの。

皆と幸せになりたいのに,皆とは違って。

それどころか,嘘だらけの裏切りだらけで。

ただ1つ守りたいがために,傷ばかり回りを巻き込んで増えていく。

閉じた瞳の奥に,最後にみたハルの表情が浮かんだ。




「たかが数時間位,匿ってやる。だからお前も,俺を忘れろ」



とんと叩かれ,呟かれた言葉がそのまんまの望みだなんて。

嗚咽に震える私は,気付かなかった。
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