ヴァンパイアガールズ
中学生の頃までは信じられなかった,ヴァンパイアの日常。
夜の,真っ暗な夜休み。
私は人のいないグラウンドで,ハルと2人きりだった。
あまり外に出るという習性を備えないヴァンパイアに見られたら,こっちの言い分は関係なく,100で告白と噂を回される。
それでもここを選んでくれたのは,ハルなりの気遣いだろうか。
単に邪魔されたくなかったのだろうか。
「浅海,来年の恋人の時間まで待てないから聞くけど。……その,浅海は……」
ハルは,躊躇った。
とても人間らしい感情で,躊躇った。
間違えたら何かが終わるように,何度も確かめるように,躊躇って。
最後に口をつぐんだ。
どうせバレているのに,聞かれることも分かっているのに。
これ以上を,ハルに言わせるの?
頼って,全て任せるの?
言いたくないのに,既に手遅れだろうと。
胸の中で,葛藤が生まれる。
「浅海は……」
「私は,人間。ヴァンパイアじゃない。ハル達の友達に,ヴァンパイアの浅海なんていない。いるのはただの,人間の浅海だけ」
星が,夜が。
私の言葉を吸い込んでいくようだった。
溶けて,無くなってしまうような静寂に包まれての言葉だった。
だけど,放った言葉が溶け消えることなんて絶対にない。
とくに,ハルの中には一生だって平気で残り続けるんだろう。