ヴァンパイアガールズ
「……友達ですら,無いってこと? 浅海が言いたいこと,よく分かんないよ」



苦しそうでも,痛そうでもなかった。

切々とした表情だった。

ううん,違うよ,ハル。

出来ることならそうやって,いないのはヴァンパイアの浅海じゃなくて,友達の浅海なんだって言いたかった。

でも,私,友達だと思っていた時間まで,無くしたくなかった。

だけどそれら全部を伝えるには,言葉が見つからなくて。

あなた達さえってずるいことばかり思ってしまうから。

私はブンブンと大きく,首だけを振った。

伝われと振った頭は,バレてはいけない余計な水分まで飛ばしていく。



「そっか。学園長は」

「ぜんぶ,知ってる。でも,広まれば,退学か,学科変え……かな」



そのあとの事は,決定されているもののわざわざ説明する気もない。

ハルは驚いていた。

特に後者を聞いて,戸惑っていた。

そりゃあそうだろう。

小さな善意の数々を,平気な顔して受け取って。

出来損ないでも,ヴァンパイアの顔をして歩いていたのに。

えさのとこ呼ばわりされるような,公然の倉庫に移動するなんて。

それだけで惨めな笑い種。

その上,ハルは私がどれだけ吸血やそれに付随するものを嫌がっていたか知っている。

なのにそんな場所に,注目を集め移ったとしたなら。

人間相手すら危うくなってしまうことを,ハルは分かっているのだ。



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