ヴァンパイアガールズ



「僕さ」

「うん」

「浅海の事が,好きだった。いつか結婚するなら,浅海がいいと思ってた」



私は,黙す。

驚いたには,驚いた。

だけどそれよりもっと。

ああ,だからか。

と納得してしまう。

今思えば,どれも1つのサインでしかなかったのに。

真正面から見られることを恐れた私は,皆をちゃんと見なかった。

だから気付かなかっただけに,過ぎないのだと。

気付いたときには,こんなにも取り零したものがある。



「でも,良かった」



そう,何もかも諦めるような。

やっと整理がつくような。

そんな寂しくて切ない顔をさせたのは,確かに私なんだろう。

だけど,その責任は私にあるのに,救ってあげられるのは,きっと私じゃないんだろう。

私に,そんな都合のいい言葉や力はない。



「僕達ヴァンパイアは……ううん,僕の家も。本気で恋して一緒になれるのは,ヴァンパイアだけだもの」



ヴァンパイアは,今も昔も,生き物としての面が強い。

人間と同じように,ヴァンパイアは,ヴァンパイアからしか産まれないから。

もし別々で添い遂げたのだとしても,ハーフは未だ存在せず,どちらか片方の性質を継ぐように出来ている。

だから,つまり。

希少性の高い男のヴァンパイアに限って,ほとんどの場合はその確実性を維持するために,"家"が"例外"を認めない。
< 28 / 111 >

この作品をシェア

pagetop