ヴァンパイアガールズ
放任主義のヴァンパイアは,なのにどうにもそこだけは捨てられないらしい。

ハルの家が,その範疇に収まる家だった。

それが,ハルがあんな顔でも良かったと口にする理由だろう。

なんて,悲しい種族なんだろうと思った。

人間と同じくらいの,男女割合だったら良かったのだろうか。

能力にすら差が出ないのに,ハーフは下に見られ,純粋な直系はやたらと鼻を高くすることもあって。

ハルの言葉は,とても素直に全てを集約していて。

ーここで止まれて,良かった。

その一言で,どれだけ自分が好かれていたのか,分かってしまうほどだった。



「浅海の血を1滴でも貰ってたら,僕はきっと,浅海をいつまでも心から追い出せないでいたはずなんだ」



だから,良かった。



「浅海,僕はなにもしてあげられないけど,何もせず,望まれるまで何も聞かず,ただ黙っていてあげる。ずっと浅海が僕に望んでたみたいに,友達のままでいよう」



そんなに私の行動は,ハルを避けているようだったのかな。

ハルを拒否してるようだったかな。

でも多分,その感覚は間違ってないんだと思う。

私は誰かとの恋愛なんて考えてない。

ハルと恋に落ちたとして,どうなるのかも,大人は特に知っている。

だから,なんだと思った。

無意識で無自覚でいながらも確かに私は,ハルの気持ちを受け入れないでいたんだろう。

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