ヴァンパイアガールズ
「美海! 前に約そ……」

「お腹,ちょうど空いてたの……」


うっとりと,美海は私をみていた。

それが本音か……!

と思わず叫びそうになる。

だめだ,これはもう完全に食料としてしか見ていない。

どうしようと視線をさ迷わせたとき,ハルが叫んだ。



「~っ分かったよ! 美海,僕のやるから!!!」



美海はクルリと回って,ハルに飛び付く。

その喜びようは,尋常じゃない。

と言うのも,ヴァンパイア本人にとって,人間の血と異性の血は格別らしいのだ。

それも,数の少ない男のヴァンパイアは大抵身持ちが良いので,より希少となる。

つまり,もし私が誰かに吸わせてしまったなら……

一瞬で,バレる。

その上簡単に喰われてしまうだろう。

それは,いや。

いくら貞操観念の無茶苦茶な世の中でも,私は全てをヴァンパイアにあげるつもりは一切ない。

人間に強姦される方が,まだましだとすら思えた。



「くそ……っ。これ,犯されるみたいでいやなのに……っ」



やっぱり,そんな感覚なのかと。

じゃあ,なんで名乗り出たの。

そう思いながら見ると,ハルは仕方ないと言うように目を閉じていた。

私はハルのこらえようとするせいで余計に危うくなっている声を通さないよう,耳を塞ぎ,背をむける。

何はともあれ。

ありがとう,ハル。

ヴァンパイア同士の吸血はWin-Win,なんてことわざもあるくらいだから……大丈夫なんだよね……?

シュウは意外にも,何故か哀れんだ瞳をむけながら。

ハルが自分で言い出したためか,顔色1つ変えずに見守っていた。



「もう……もういいだろ,美海……」

「うん,ごちさま……」



なんなの,全く。

……これが,ヴァンパイアの日常。
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