ヴァンパイアガールズ
「俺も正直,今バレたら困るんだよ。だからあんときは,もうダメかと足掻こうとしたら気ぃ失ってて」

「ちはやは何でなの。私は全部じゃないけど答えたでしょ」



ちはやがため息を吐く。

私はびくりと肩を揺らした。



「全部じゃなくて,いいの」

「追われるのが好きじゃねぇんだよ」



追われるって,誰に?

私は予想外の答えに,きょとんと無防備な顔をする。

そこで気分が乗ったのか,ちはやも砕けた顔でそれを愉しんだ。



「俺は希少価値と味でしか見られねぇわけ。そんなのつまんねぇだろ,その上相手選ぶのはてめぇでありたい」



俺様っぽいちはやらしかった。

そうなると,ちはやを追う存在も見えてくる。

ヴァンパイアの女と,縁談。

人間としてでも絡まれるのは避けられない。

でも,それは物理的にかわせばいい。

面倒なのは後者の方なんだなと,早めに組まれるヴァンパイアを可哀想だと思った。

だからちはやは,女の園みたいなヴァンパイア側としての入学を避けたかったんだろう。

シルバー·ブレッドのヴァンパイア校舎へ通う生徒は,総じてヴァンパイアガールズと呼ばれるほどお嬢様だらけ。



「それに,性に合わねぇんだよ。俺は自分のものを他人と共有するなんざ,腹が立ってしかたねぇ。なのにヴァンパイアなんて,誰かに手付けられてるか付けてるやつしかいねぇだろ」



どこからが手を付けるなのか,知らないけど。

吸血本能を備えて産まれてくるヴァンパイアで,吸血1つしない女は存在しないだろう。
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