ヴァンパイアガールズ
この日常に溶け込むのに,友達は必須だった。

だけど,この子達は打算だけで付き合ってる訳じゃない。

皆そこそこに大好きで,3人に逢えたことが,人生の中でも最も幸運なことだったように思う。

私は,ヴァンパイアが嫌いだ。

私の大切な人を,奪っていったかもしれないから。

先に犠牲を払うのはいつだって人間で。

等価交換は素晴らしく成立しているように見えても,それは平等という意味ではない。

ずるいくらいに優位に立つヴァンパイアが,私は大嫌いだった。

だけど,ヴァンパイアの中では平和的な,シュウにハル,美海は別。

たとえその関係が,偽りを含んでいたとしても。

私の目的の前にあった,取らなくてはいけないアイテムでしか無かったとしても。

私はできるだけ,皆に誠実でいたい。

この関係を,壊したくない。



「そう言えば,恋人の時間,明日の放課後ごろだって」



私ははっとしてシュウをみた。

年に1度,ヴァンパイアが人間を人間と認識できる日。

それは私が,もっとも恐れている日だった。

月の巡りだとか,星の巡りだとか。

理屈はよく分からないけど,年に1度のその日が来ると分かれば,直ぐさま速報がながれる。

来る前に見たニュース番組では,そんなこと取り上げられていなかったから。

きっとここに来るまでの間にスマホに流れた速報だ。



「お前,確か気にしてなかったか? なに,人間だったらいいって,食べてみたいやつでもいんの?」



そりゃ気にするよ。

なんて,言えない。



「そんな,とこ。……ごめん,私,先いく」

「りょうかい」



恋人の時間。

匂いと言う感覚で,ヴァンパイアが明確に人間を感じられる日と時間。

人間の血の濃度も高まることから,異種間のカップルは殆どがイチャつく事になる。

それが名前の由来だった。

昔から変わらない,クリスマスみたいなものだ。
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