ヴァンパイアガールズ
「私,お兄ちゃんと関係のあった人やヴァンパイアを探してるの」



私が誰なのか知られたら困るから,誰彼構わず話しかけるわけにはいかなかったけど。



「兄?」

「そう,生きてたら,今頃ここの3年生だった」

「……浅海のやり遂げたいことって」



気分はよくなさそう。

そんな真剣さを持ち合わせた表情(かお)をしていた。

勘がいい,ヴァンパイアの世界を生きるヴァンパイア。

それでこそ,ちはやだって。

私は無視をして,勝手に喋り続ける。



「お兄ちゃんは,早朝の路地裏で転がっていたの。腕をナイフのようなもので負傷して,首筋には吸血跡,体内には媚薬効果の毒。1つでもいい,その出来事に関する手掛かりが欲しいの」

「復讐でも,するつもりなのか」



復讐? それはとても良くある話だね。

でも私は



「私は,何が原因なのか知りたいだけ。でももし,それが故意的な,人為的なものだったなら……私は絶対,その存在を許さない」



籠絡されたのか,襲われたのか,ただ自分から提供した事故だったのか。

絶対に1人で死んだわけではなかったはずなのに,誰も名乗りでないのは何でなのか。

私はただ,知りたいだけ。

貧乏だからとこんな場所で人間として暮らしたお兄ちゃんは,私ほど頭は良くなかったけれど,誰より優しい人だった。

ここに一目惚れしたヴァンパイアがいるからと,笑顔で入学に頷いたお兄ちゃんが,ある日突然帰ってこなくなるなんて許せない。

そんなの,聞いてないの。
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