ヴァンパイアガールズ
ドアを開けると,ピアノが止む。



「美海? と……駆くんの妹?」



名前を呼ばない辺り,想い人の家族にまでは思い入れがないと分かった。

細い声は,とても透き通っている。



「駆くんが,どうしてあんな薄暗い路地裏に倒れ死んでたのか,知りたいの。何か知ってるんでしょ? 欠けてるヴァンパイアに,駆くんを殺すことなんて出来ないけど」

「……欠けてる?」



思わず呟いた言葉に,サクラさんが答えた。



「これは,家族と駆くんしか知らないことなんだけど……私には,吸血が出来ないの。毒も上手く作用しない上に,どうやって吸ったらいいかが分からないの」



だからそんなに儚い姿なのか。

聞いたこともない話なのに,その出で立ちに納得してしまう。

今は他に知りたいことがあったのも,1つの要因かもしれない。
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