ヴァンパイアガールズ
「ところでちはやくん。久しぶりね。シュウくんは元気?」



え,と思ったのは私だけではなかった。

美海も怪訝そうに"特待生"を見る。



「話をそらすのに俺を使うな。どうだっていいだろ」



さらりとプラチナのロングを広げたサクラさんは,その瞳に涙を浮かべた。



「相変わらず,つれないヴァンパイア。駆くんくらいデリカシーがあれば良かったのに。……駆くんの事を話すのはね,私だって……つらいのよ」



私の横で,小さく動いた美海は,何か納得したようにため息を吐いて,口を閉じる。

美海が何を理解したのかは分からなかったけど,私は反対に身動き1つ取れなかった。

私はただ知りたいとここに来たけど。

サクラさんの事なんてなにも考えていなかった。

ヴァンパイアがどんなに残酷な面を持っていたとしても,どんなに大切にするものが少ないとしても。

どこまでも直情的で,時に想う心がズレたとしても。

感情がない訳じゃない。

愛する気持ちや喪う気持ちがないわけじゃない。

なのに私は,自分ばかり辛いような気持ちになっていた。

目の前にいるのは,この綺麗で儚いヴァンパイアは。

お兄ちゃんが好きだった,唯一のヴァンパイアなんだ……
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