ヴァンパイアガールズ
「最初,少しでも飲めたらって,駆くん,私に腕を噛ませたの,でも,無理だった……だから,自衛用だって,動けない私の前で……深く,腕にナイフを刺した……」



思い出したのか,サクラさんは自分の眼を覆った。

動けない自分の前で,人間の好きな人がナイフを突き立てる様は,どんなに怖かっただろう。

サクラさんはずっと輸血パックで生きてきたのだから,生の血液なんて初めてだったはずだ。



「美味しかったの,駆くん,本当に,びっくりするくらい美味しい血液だった。相性ってほんとにあるんだわって知って……余計に駆くんの行動が怖かった」



お兄ちゃんは,馬鹿だ。

そして,優しい。

恋人を少しも待たせず助けてあげられるのに,そうしない理由なんて無かったはずだ。

サクラさんは私に目を留めて,無理に笑う。



「私達ヴァンパイアと違って,人間の血の繋がりも特別だわ。浅海ちゃん,やっぱり駆くんの妹ね」
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