ヴァンパイアガールズ
「……いえ」



私はサクラさんを悲しませても仕方ないであろう右腕を,さっと隠した。

これは,お兄ちゃんと同じ様に。

ヴァンパイアの為に,自分で作った傷だった。

包帯を取った下が,もう治っていれば良かったのに。



「それで,私……血だらけの駆くんを1人にしちゃいけなかったのに……突然食事したからって,自分も直ぐに病院にいくからって,休んでから帰れって言ったの。私,駆くんが血を流すのが怖くて,言う通りにした」



サクラさんは,悪くない。

お兄ちゃんも,馬鹿だけど悪くない。

なら,どうしてそのあと死んでしまったの?

そのあと,何があったの?



「帰ろうってついた帰路は,病院の方角と一緒だったの。もしまだいるなら,寄ってからお礼と謝罪をしようと思ってた。だからね,駆くんの第一発見者は,朝になって匿名で通報したのは……私,なの」



今にも,お兄ちゃんの姿が目に浮かぶようだった。

そんな,感情のこもった死んでしまいそうなほど苦し気な声。

伝わる私でこうなのだから,今サクラさんの頭には何が浮かんでいるのだろうと思う。

どうしてすぐじゃなかったのか,どうして匿名じゃなきゃいけなかったのか。

どうして私達に,知らせに来てはくれなかったのか。
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