ヴァンパイアガールズ
ほんとに分からない様子だった。
だけど,その瞳が子供のように揺れている。
私は唇を噛んで,安心させるように笑った。
分かってる。
美海は悪くない。
美海はただ,誰かを恨んで,誰かのせいにして……お兄ちゃんが死んだことから目を背けて楽をしたがった私の空気を,敏感に察しただけ。
少し,感化されてしまっただけ。
「私のため,なんだよね。ごめんね美海。でももう,いいの。ちょっとずつ理解して,受け入れるから。どうせ任意なら事故で,犯罪じゃない。だからと言って,その子に死んでほしいとも,もう思えない。だから,いいの……サクラさんは,本当は思い入れの少ない私にも本当の事,話してくれたから。それで,いいの。私のためにサクラさんを責めるなんて,もういいの」
私の目的はもう,果たされた。
お兄ちゃんのお墓にまた挨拶をして。
それでもう,私がすがるのは,終わり。
大事なお兄ちゃんだったけど。
『浅海』
そう呼んで,撫でて。
身を守る術やヴァンパイアとの生き方を教えてくれることは無いんだって,そろそろ理解しなくちゃいけないんだ。
「サクラさん,ありがとうございました」
お兄ちゃんを愛してくれて,大事にしてくれて。
ごめんなさい。
過去を踏み荒らして,抉ってしまって。
ありがとう,ございました。