ヴァンパイアガールズ
コンコンとノックする音がする。

私は手に持ったペン先を,紙に置こうとした動きを止めた。



「誰かね? 今は込み入っているか……」



学園長が違和感に顔をあげる。

ノックの相手は,既に部屋へと入ってきていた。



「きっ,君は……走りくん……これは,その,何も怪しい紙ではな……ちょっと!!!」



そう言えば,ちはやの名字はそんなんだったと,丸い瞳がちはやを映し出す。

力のある家と言ったか,学園長の取り乱しようにも納得できた。



「何してんの,ちはや」



嬉しさを隠した呟きは,ちはやに届く。



「こっちの台詞な」



そう吐き捨て笑ったちはやは,目の奥が恐ろしく冷えていた。

怒ってる。

そう感じて,私は見なかったことにする。
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