ヴァンパイアガールズ
「こんなちょっとつついたら死ぬタヌキと,引く手数多の優良ヴァンパイア。浅海が好きなのは,どっちだ?」



そんな聞き方じゃなくても,絶対に良かった。

その不機嫌な顔も,冷えきった瞳も,怒気にまみれた音も。

何一つ怖くない。

私はちはやに1歩寄った。

余計なことをするなと,学園長の視線が背に刺さる。



「……絶対ちはや」



絶対は,ちょっとサービス。

だって,誰がみてもそうでしかないから。

あと,わざわざ計画して助けてくれたから。

いつからだろう。

突然の問いにも,すんなりと答えることが出来た。

初めて自覚して,同じ意味の事を口にしたけど。

すとんと胸に落ちて,異物感や違和感はない。

こんな,ちょっとサイテーで,大食いで,勘違い野郎みたいな俺様なのに。

いつ,このヴァンパイアを好きになったんだろう。

今助けに来てくれたから?

違う。

そして,首を絞められたときでもないと確信に近く分かる。

あれはただのサイテーな気分だった。

じゃあ,身を切って血を分けた時はどうだっただろう。

もうそうだったのかな。

それとももっと最初の……

ファーストキスを簡単にあげてしまったときかもしれないと思った。

私は,ちはやの事が好きだった。
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